インフルエンザが猛威をふるっているこの冬であるが、筆者の外来にも、のどの痛み、咳、発熱といった、いわゆる「風邪」症状の患者さんが押し寄せている。今回は、本邦において、ここまで「風邪」診療が必要なのか書いてみたい。
風邪の多くは、のど周辺の上気道症状から始まる。多くの患者さんは、のどが痛いから薬が欲しい、咳が出るから咳が欲しい、熱があるから薬が欲しいと言って来院する。そして、多くの医師は、これら症状を緩和するための対症療法としての処方を行う。
風邪の多くは、ウイルスが上気道の粘膜を介し感染するもので、上述した対症療法では治らない。対症療法には抗ウイルス作用はない。そもそも、上述した風邪症状は、ウイルスが体内に入り込んだ際に、体がウイルスを排除するために生じている体の免疫反応である。この反応を薬で強制的に抑え込むことは、ウイルスの増殖を促進する行為ですらある。
対症療法は、本当に症状で困ったときに必要最小限行うものである。風邪を治すと信じ切っている患者に対症療法をあたかも根治療法のごとく提供するきらいが本邦の現在の医療現場にはある。
医療費抑制は本邦の喫緊の課題であるが、まずはこういったところから一つ一つ見直してみる必要はないだろうか。