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情報の非対称性と適正な医療

昨今の医療は供給過多になってはいまいか。医師不足と言いながら、それは患者の理解不足に医療者側が目をつけてお金儲けをしようとしているだけではないか。そのような側面が昨今の医療にありはしないか。今回は、医療者と患者の間にある情報の非対称性が適正な医療を妨げているのではないかという点について書いてみたい。

最近、いわゆる地方の医師不足という前提のもと、医学部の定員増などの施策が打たれているが、いわゆる地方の医師不足はなかなか解消せず、医師は都市部に集中するように見受けられる。そうすると、都市部では、医療の過剰供給が生じ、いわゆる患者迎合型の医療がはびこるようになる。すなわち、患者が薬Aを出せと言えばAを出し、検査BをやれといえばBをやるといった具合である。そこに医学的判断が入らなくていいのであろうか。

当然のことながら、医師と患者との間には医学的知識や理解の面で大きな差がある。最近多いのは、インターネットの発達によって、患者も中途半端な医学的知識を入手できるようになっている。そうすると、自身の症状は、インターネットに書いてあるこれこれに似ている、だから自身はその病気に違いない。だから、自身が希望する特定の検査なり治療なりを実施せよという医療者側への要求である。そこには、体系だった理解など何もないから、的外れなものも多々ある。

こういった要求が来た際に、どう対応するかで医療機関の立ち位置が大きく異なる。本来、医療機関は患者に適正な医療を提供するのが使命であるから、提供すべき医療と患者に理解に齟齬があれば、当該患者によく説明し、その誤解を解き、当該患者が納得した上で、当初の患者の希望とは異なる医療を提供することになる。ただ、このステップは非常に時間がかかり、医療を単なる金儲けの手段としてとらえる医療者からみると全く採算がとれない。患者がAをせよといえば、何の医学的根拠もなく、Aを提供してしまったほうが効率よくお金儲けができる。結果として、患者のいうことに従って何も考えずほいほいと動く医師がよい医師ということになり、適正な医療を提供しようと努力して患者に説明しようとする医師はけしからん医師ということになる。ひどい事案だと、適正な医療を提供しようとする医師を誹謗中傷してまで患者に迎合する医師もいる。

医療機関を受診する際はよくよく注意したほうがいい。目の前の医師が、適正な医療を提供しようとしているか否か、時に患者の耳の痛いようなことを言っていれる医師のほうが名医であることが多いと感じる今日この頃である。