最後に法律系の資格試験を受けたのは16年以上前の司法試験。1年の準備期間を経て、本年度の行政書士試験に合格した。今回は、私が行政書士試験に至った経緯、今後の展望などについて書いてみたい。
1.司法試験受験経験者にとっての受験のしやすさ
司法試験受験経験者にとって、行政書士試験は合格しやすい。その理由の一つとして、受験科目の重複が多いことがある。行政書士試験の配点の約3分の2は行政法と民法であるが、これらは司法試験でも主要科目として位置づけられている。司法試験受験生であれば、民法は司法試験の復習でほぼ済んでしまう。民法については、司法試験の準備でおつりがくるくらいであろう。行政法は司法試験の復習に加えて、行政手続法や行政不服審査法、地方自治法など、行政事件訴訟法以外の範囲もやや厚く準備しておいたほうがよい。
上記2科目のほかには、憲法、商法などもあるが、これらも司法試験の復習で足りる。そのほかには、一般教養的な知識や文章読解などもいくらか問われる。日々のニュースなどにアンテナをたてて、基本的なことは理解しておく必要があるだろう。
2.行政書士業務のポテンシャルの高さ
行政書士と聞いて、どんな仕事をするのかイメージが湧きにくい人も多いだろう。私も、父が行政書士であったが、父自身も自身が何ができるかよく理解していなかったほどである。行政書士の独占業務を積極的に定義するとすれば、行政書士法にある通り、各種許認可手続き、権利義務や事実証明にかかる書面作成ということになる。逆に消極的に定義するとすれば、こういった業務で他士業の独占業務とされていないものとなる。であるから、新たな許認可や書面作成業務が出現した場合には、基本的にはそれらは行政書士の独占業務となる。最近では、ドローンの許認可などがある。コロナ禍では各種補助金業務が拡大した。このように、将来的に新たな独占業務が出現する必要があり、業務範囲について将来的なポテンシャルが見込める。
また、許認可などには特に言えることとして、単なる書面作成や申請業務にとどまらず、依頼者に対してそれをきっかけとしたコンサルティングを行うことができる。依頼者側にも、単なる書面作成だけでなく、その後のビジネスを成功させるためにどうしたらよいか、助言が欲しいというニーズがある。こういったニーズに法律の専門家として質の高いサービスを提供できる点も魅力的である。
3.独立開業のしやすさ
行政書士は、試験に合格するとすぐにに行政書士会に登録して仕事を始められる。自宅を事務所としてもよい。司法試験のように、修習を受けないと登録できないということはない。自身の能力や努力次第でいくらでも業務を展開してゆくことができる。
以上、司法試験で合格できた人はいいが、合格できなかった人でも、行政書士という選択は一考に値するのではないだろうか。