「知否」という曲を知っているだろうか。ほとんどの日本人はこの曲を知らない。今回は、この曲に関連して、日本文化の奇妙さについて記してみたい。
「知否」は中国の曲である。もともと900年ほど前に中国で作られた歌であるが、歌詞はそのままにミュージックの部分を現代風にアレンジして5年ほど前に中国の人気ドラマの主題歌として使われ、一躍ヒット曲となった。YouTubeでも聴くことができる。「知否」とは、日本語で訳すと「知っていますか」という意味である。
筆者は音楽が好きで、これまで国内のみならず、欧米の音楽を聴いてきた。高校生から大学生にかけて英語の音楽をよく聴いたため、英語の発音の習得にとても役立った。そこで、今回、筆者が中国語を学んでいる中国在住の中国人に、中国語の発音の練習に役立つような曲はないかと尋ねて教えてもらったのがこの曲である。筆者にとって、初めて聴く中国の曲でもある。
歌詞の内容であるが、筆者はこれまで、これほどまでに美しく、奥ゆかしい曲を聞いたことがない。この上なく美しい歌詞の内容である。ミュージック部分のアレンジと、中国語独特の美しい発音が相まってこの上なく美しい。
問題はここからである。日本で海外の音楽と言えば、たいてい欧米の曲を思い浮かべることが多い。しかし考えてみれば奇妙なことである。私たちは、地球の裏側で、全く文化背景が異なる音楽を多く聞く機会が多い一方で、文化的にも近く、素晴らしい隣人の音楽はその存在さえ知ることがない。政治面などは、隣人諸国と一定の距離を置く本邦の立場も理解できなくもない。しかし、文化面においてまで隣人と距離を置かなければならないものなのだろうか。
いずれもしても、筆者はよいものはよいとして評価し、吸収して自身の生活を実りあるものにしたいと思う。自由な表現活動が保障されている本邦において、不必要な垣根を取り払えるかどうかは、個々人の意識にかかっているのではないだろうか。