法律

「患者に寄り添う」の誤解

先日、非常勤で勤務していた訪問診療クリニックを即日解雇された。1年間の期限の定めのある契約であるにも関わらず、契約期間満了前の即日解雇でずいぶんと乱暴なものである。

理由は、クリニックの方針として、訪問先の患者さんの誕生日に誕生日プレゼントを筆者が渡さなかったというものである。は?耳を疑った。これは、保険医療機関及び保険医療養担当規則にいおいて経済上の利益の提供による誘引の禁止として禁止されている行為である。つまり、法令違反をしなかったことが解雇事由のようである。加えて、本件は、期間の定めのある契約における、契約期間満了前の解雇であるから、「やむを得ない事由」が労働契約法上求められるが、当然ながら、法令違反行為をしなかったことは「やむを得ない事由」にはあたらない。つまり、二重の法令違反である。

クリニックの院長いわく、自身は患者に寄り添う医療を目指しており、患者さんには「物」を渡すのではなく、「お気持ち」を渡しているのだとのこと。この論理に基づくと、賄賂罪における金品はすべて「お気持ち」だと主張すれば免責されることになり、賄賂罪そものもが空文化することになる。

そもそも、医師免許をもって医療行為を行うことが許されているのは、医師法という法令があるからである。そうでありながら、法令Aに基づき医療行為をしたいが、医療行為にあたり求めらる法令Bと法令Cは自身が気に入らないから守らないという主張となる。

いろいろな医師がいるものである。