今回は、紛争とはどのような状態を言うのか考えてみたい。紛争といっても、どの程度の広さの意味合いで言っているかで変わってくるが、ここでは法的な紛争について述べる。これについて、明確に書いてあるものはあまり見かけないが、紛争とは、当事者間の両立しない権利義務に関する主張がなされてものを指すと言えよう。
例えば、自身がある土地を所有しているとする。この土地について、誰も何も主張しなければ、紛争は生じない。しかし、もし、他の人が、いや、それは私の土地だと主張したらそれは紛争となる。誤解されがちなケースとして、自身が長らく所有している土地で、何ら心当たりのない者が、突如としてその土地の所有権を主張してきた場合などである。この場合、主張される側としては、相手の主張に全く心当たりがなく、根拠も見当たらないことから、相手にするのもばかばかしいと放置しがちである。
単に口頭で平穏に言われているのであれば、通常は問題はないだろう。しかし、これが裁判手続きとなると放置はしていられない。例えば、訴状が届き、その土地の所有権の主張が相手方からなされた場合、それを放置すると擬制自白とみなされてしまう可能性があり、相手方の所有権が確定してしまうことがある。であるから、いわば、売られた喧嘩は買わなければならないのである。
そして、これは国レベルでも類似のことが言える。例えば、我が国の領土の一部について、我が国の政府が、領土問題、すなわちその領土に関する紛争はないと表明したとする。しかしながら、他国がその領土は自国のものだと主張すれば、両者の主張は両立しないため、それは紛争となりうる。
国のレベルで、領土問題はないとする主張は、政治的に紛争対応を有利に進めたいという戦略的な対策としては有効かもしれない。しかし、上述した紛争に関する理解をふまえたうえで、こういったことをみてゆく必要はあろう。