近年、ビジネススクールなるものがブームである。今回は、ビジネススクールの実態とその意義について、筆者の体験をふまえて書いてみたい。
ビジネススクールは文字通りビジネスを学ぶスクールである。企業でリーダー的な役割を目指す方が必要な知識や考え方を学ぶため、あるいは、これから自ら起業しようと考えている方で、かつ、経済的、時間的に余裕のある方には向いている。
ビジネススクールを修了すると、MBA(Master of Business Administration)、日本語でいうと経営学修士(経営管理学修士など他の呼称を用いているスクールもある)という学位を取得することができる。これは、形式的にはあくまで学位であるが、内容が充実しているスクールを修了して得たMBAは、実際には資格に準じた扱いを受けることが多い。
社会で起こる事象には一定の法則性が見いだされることから、社会科学という分野が成り立っている。ただ、この法則は自然科学のそれほどは正確さを欠くことが多く、検証が困難なことも多々ある。
このことの反映として、MBAを取得したから直ちにビジネスがうまくゆくかというとそうでもない。ビジネススクールでは、ビジネスを科学的、いいかえれば、再現可能な形で理論化したものを学ぶ。ビジネスの基礎となる知識や考え方を学ぶ場である。ビジネススクールで学んだうえで、ビジネスで成功している方もいるし、逆にそのようなことは学ばなくても、いきなり実践で成功している方も多くいる。本邦では、後者の経営者のほうが多いだろう。ただ、ビジネススクールではビジネスの基礎的な考え方を学べるため、習得しない方より習得した方のほうが、ビジネスを行っていくうえで成功確率は上がるであろうし、優位とは言えるだろう。
ビジネススクール選定にあたり、まず大きく分かれるのが、海外、特に欧米のビジネススクールを選択するか、国内のビジネススクールを選択するかだろう。最近はオンライン化もされつつあるようではあるが、やはり海外のスクールのほうがお金や時間がかかる。一方で、国内のビジネススクールは現在の仕事を中断せずに学べるところも多く、お金や時間の投資は相対的に少なめで済むであろう。
海外のスクールの良いところは、もともとビジネススクール自体が欧米発であるため、名だたる有名校で高度な内容を学べることであろう。言語は主として英語で行われるため、英語に自身のある方にはよい選択肢となる。また、ビジネスでは人のネットワーク形成が後々有益であることから、国際的に活躍したい方は、国際的なネットワーク形成の観点からも海外のビジネススクールはよい選択肢となろう。
一方で、最近は、国内のビジネススクールの環境も整備されつつある。多くは、日本語で行われることから、日本人にとって言語の壁を感じることなく内容をよく理解できるという利点はある。また、国内のネットワーク作りには国内のビジネススクールが優れているとは言えるだろう。
また、海外、国内のビジネススクールともに言えることだが、AACSBなどの国際認証を受けていることが大切である。一口にビジネススクールといっても様々なものがあり、国際認証を受けているスクールはごく一部である。プログラムの質が担保されていることの目安として国際認証を受けていることの意義は大きい。
さらに、修了後であるが、本邦で企業勤務する場合は、特に外資系企業でMBA取得者であることが高く評価される傾向にある。一般に外資系企業では、MBA取得は、社内昇進のみならず、転職の場合も同様に有利に働く。前述のように、もともとビジネススクールは欧米発のものだからである。
他の資格のように、MBAを取得したからといって、急に今までできなかったことができるようになるという実感は湧かないことが多いかもしれない。しかし、ビジネスマンにとってビジネスの基礎を学んでおくことは長い目で見れば有益であり、MBA取得の機会に恵まれるのであればキャリア形成にあたり一考に値するであろう。