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保険診療

近年、患者の権利意識の高まりとともに、医学的必要性が乏しいにも関わらず、保険診療として当該診療行為を求める患者が少なくなくなった。今回は、このような患者と保険診療について書いてみたい。

当たり前のことであるが、一般に患者は医学的理解の点で医師に及ばないことが多い。よくあるのは、医学的にしてはならない診療行為をせよという患者からの要求である。これは、当然のことながら断るべきである。患者のための医療を、患者がやってくれと言っている医療と同義ととらえてはならない。例えば、患者がそのことをよく理解していないまま、患者自身の体に害悪が加わるといった類の要求である。

問題は、患者の健康に害悪にはならない、つまり行っても患者に健康被害は生じないが、メリットも乏しいといった類の医療行為である。最近、こういった医療行為は、多くの医療機関で、保険適応外の自由診療として患者にご案内することが多くなった。

しかしながら、しばしばこの保険適応外との説明で患者の憤慨をかうことが少なくない。こちらが、保険診療を適正に運用する観点から、保険適応外の自由診療としてご案内するわけだが、診療そのものはお断りしているわけではない。保険診療としてできないと説明すると、患者からこれを診療拒否ととらえらる場合もある。こちらの医師としては、それほどその診療を受けたいなら、国民が出し合った相互扶助のためのお金ではなく、ご自身のお金で負担すべきだと説明しているにすぎないにも関わらずである。

また、全額自己負担となると、患者自身の出費が多くなることに憤慨を覚える患者もいる。保険診療なら、7割あるいは8割といった割合で保険からの補填がある。これが受けられないのはけしからんという主張である。

特に最近は、少子高齢化の影響で労働者が高い保険料を支払っている。高齢者がこれら現役世代の保険料を食い散らかす権利はない。実際、上述したような要求をする患者は、今のような高い保険料を負担したことのない高齢者が多いようにも思う。自分さえよければ、他人の痛みや迷惑は関係ないといったタイプの高齢者である。その意味で、この問題は、年金同様、年代観のコンフリクトともとらえられるのかもしれない。