医師のキャリア

メディカルドクター(製薬企業内医師) -医師のもう一つの選択肢-

今日は、私が医師であることから、医師のキャリアについて書いてみたい。

医師も40歳くらいになると、その後のキャリアを考える人が多くなってくる。

多くのケースは、20代で勤務医となって10数年程度病院に勤めてきたが、転職して病院を変えようか、あるいは、開業しようかというものであろう。このくらいのタイミングで選択肢にあがるのが、メディカルドクター(製薬企業内医師)である。

最近、インターネットで医師のキャリアを調べていると、製薬企業のメディカルドクター(MD)について書かれているものを見かける。しかし、情報量が必ずしも十分とはいえず、実際のところがよく分からないことが多い。私は、MDとして10年ほどになろうとしているが、最初に病院から企業に転職する際に、情報が少なくて困った経験がある。そのような経験をふまえ、差し支えない範囲で、MDの概要について書いてみたい。

製薬企業がMDを正社員として雇用する最大の理由は、その実臨床経験を活かして社員として働くことにメリットがあると考えていることであろう。

薬が患者さんのところに届くまでには、長い道のりがある。この道のりの後半部分では、実際に薬を患者さんに処方してどうなのか、という極めて実臨床に即した判断が求められる。この判断の参考意見を、顧問契約といった形で社外の医師に求める企業も我が国ではまだ多い。

しかし、最近の製薬業界の流れとして、医師を正社員として雇用して、実臨床面も含めて社内でより主体的に意思決定しようとする企業が多くみられてきている。特に、重要な判断に際しては、社外の顧問の医師と一般社員とが話し合って意思決定するよりも、医師である社員が、社外の顧問医師の意見もふまえつつ、社内で他の社員と議論し、意思決定したほうが的確な判断ができることが多い。欧米ではこのような考えのもと、ずいぶん前からMDが製薬企業内で活躍している。実際、我が国でも、MDは欧米系の外資系企業に多い。

MDの仕事は、病院やクリニックで働く医師のように、直接患者さんを診る仕事ではない。会議に参加したり、書類を読んで作成したりといった仕事が中心となる。であるから、患者さんを日々診ることができなくなることに物足りなさを感じることもあるかもしれない。しかし、臨床医として救える患者さんに限りがある一方で、MDは、間接的とはいえ、薬剤を通じて多くの患者さんを救うことができる。これは、MDの仕事の最大のやりがいといってよいだろう。

MDについては、このようなそもそもの話から始まって、多くの情報があるので、機会を改めてまた書きたい。