医師のキャリア

メディカルドクター(MD:製薬企業内医師) -その仕事内容:開発部門ー

今回は、MDの仕事内容について書いてみたい。

MDが仕事をするにあたり、所属する企業内の部署は、主に3つである。すなわち、開発部門、ファーマコヴィジランス部門、メディカルアフェアーズ部門である。それぞれ、仕事内容に特徴がある。まずは、今回は開発部門について述べてみたい。

皆さんが、おそらくは最もイメージしやすい部門であろう。新薬の開発に関わる仕事である。ただ、新薬の開発といっても、マウスなどを使った基礎研究のようなものとは異なる。主な業務は治験に関するものである。基礎開発と区別するため、臨床開発と呼ばれることもある。

薬剤は、基礎研究の過程を経て、実際に人に投与されてはじめて市販することが可能となる。このステップが治験である。新薬開発の最終的なステップといってよいだろう。MDの仕事としては、この治験のデザインの企画が一つある。どういった集団で、どのように試験薬(治験では使用する薬剤をこう呼ぶ)を投与するかといった治験のデザインを考えることである。臨床医学に精通した医師としての判断が有用な場面である。

また、実際に治験を実施するにあたり、実施機関(病院やクリニックなど)とのコミュニケーションをはかる仕事もある。各実施機関の治験責任医師などとコミュニケーションを持つ際、医師同士のほうがコミュニケーションしやすい場面も多々あるためである。

治験は、国の承認を得ることを目標として行う。この際、国の担当組織であるPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)と交渉することもMDが関与することも多い(この業務を開発薬事業務と呼ぶ)。PMDAの審査官も医師であることが多いため、医師が対応したほうが臨床に即した交渉がしやすいためである。

また、そもそも治験実施以前の問題として、どの薬剤を開発するのか、という戦略策定の仕事もある。その際は、市場、すなわち、医療現場のニーズをふまえた判断が必要となるため、やはりMDが活躍しやすい場面である。

開発業務は長期にわたるため、じっくり腰を据えて取り組みたい方には向いている。もちろん、いつまでに何をやらなくてはならないのかというマイルストーンがかなり厳格に決められているため、マイルストーンを守る苦労はある。一方で、予算規模も大きく、大規模なプロジェクトに関われることは大きなやりがいとなる。さらには、最近多くなったグローバル開発では、頻繁に米国などの本国のグローバル本社などとのコミュニケーションが必要となるため、特に英語によるコミュニケーションが好きな方には向いているだろう。そして、最終的に、薬剤が承認されて、市販されるに至った際の達成感は、医師として多くの患者さんに貢献できることで、ひとしおであろう。