医師のキャリア

メディカルドクター(MD:製薬企業内医師) -必要な資質・能力としての英語によるコミュニケーション能力ー

今回は、MDに要求される、英語によるコミュニケーション能力について書いてみたい。

社会のグローバル化に伴い、製薬業界のグローバル化も進んでいる。そうすると、海外関係者とのコミュニケーションも多くなる。特に、米国、そして欧州とのコミュニケーションの機会は多く、そのほとんどは英語で行われる。また、外資系企業では、特にMDの場合は、重要な役職を任されることから、上司が外国人であることも多く、普段の社内コミュニケーションも英語で行われる。また、MDが海外とのコミュニケーションをリードすることも多く、英語によるコミュニケーション能力はMDにとって必要不可欠といっていいだろう。

MDにとって英語によるコミュニケーション力はあればあるだけ望ましい。米国のトップスピードの英語を聞き取りにくい電話会議システムで聞き取れれば、仕事の効率も格段に上がる。したがって、MDにとって、英語によるコミュニケーション力があるほうが、その後の昇進はより円滑となる。製薬業界の場合、グローバル展開している企業であれば、主戦場はほぼ米国となるため、英語によるコミュニケーション能力は重要である。

ただ、多くの場合、最初からみなそれほどの能力を持っていない場合が多い。臨床医から初めて製薬企業に転職する時点のおよその目安であるが、日本でよく行われているTOEICでいえば、700点は欲しい。800-850点あればほぼ選考で不利益に扱われることはないだろう。人事部もこれだけあれば、英語で異議を唱えることはまずない。もちろん、900点、あるいは満点といったMDも多くいるのが実情ではある。

一つ留意すべきは、TOEICは一つの目安にすぎないということである。世界的にみて英語によるコミュニケーション力をTOEICで測ろうとするのは日本をはじめわずかである。仮に欧米で働こうとすると、TOEICはあまり評価されない。TOEICは聞き取る能力、読み取る能力に特化しているため、話す能力、書く能力が測れない点が大きい。製薬業界ではないが、私の友人でもTOEICは900点だが、ほとんど英語で話せない人もいる。

製薬業界に限らないが、高校や大学の入試の英語のようなものとはいくらか異なり、英語「によるコミュニケーション能力」が求められる。すなわち、英語は道具にすぎず、それを使った「コミュニケーション能力」のほうが重要である。であるから、コツのようなものも多々あるし、最後は話している内容での勝負となる。であるから、TOEICはあくま目安にすぎず、TOEICなど受けたことがなくても、実際に英語を使ったコミュニケーションができればそれでよい。最低限、英語によるコミュニケーションに対するアレルギーさえなければそれでよいという人もいる。

MDの場合は、最初はTOEICで700点とか800点程度で入社して、あとは徐々に働きながら身に着けてゆく人が多い。使う単語もなじみのある医学用語も多く、ひとまず手をつけやすい。実際には、入社すると、外資系企業の場合などはまず、欧米のグローバル本社などからの電子メールへの返信の仕事などから入ることが多い。そして、電話会議システムを用いた会議を行うことになる。また、人と人とのコミュニケーションであるから、一度会おうということになり、機会をみて先方が来日するか、こちから出向くことも多い。

私見になるが、お勧めはTOEICでまずは800点を獲得して応募することである。上述したようにTOEICはあくまで目安ではあるが、その内容はある程度英語によるコミュニケーション能力の基礎的な部分を押さえたものとなっている。また、TOEIC試験で900点はかなり難しいが、800点はある程度準備すればそれほど難しくない。そして、あとは入社してどんどん英語を使ってコミュニケーションしながら上達することである。

MDとして、英語を使ってコミュニケーションしているととても楽しい。それは異なる価値観や多様性のある考え方に多く触れることができるからである。仕事の活躍の場が世界にわたると、自身の視野も広がる。これもMDの仕事の醍醐味の一つである。